年末で、忙しい時に体に疲れが溜まっていたらしく、買い物に出た時に足元がふらついてしまいました。その際に転倒して右腕で体を支えたのが原因で、右腕の上腕部を骨折してしまいました。ひどい痛みで、腕がブランとしてしまって上にあげることもできず最悪でした。でもまずは帰宅しないと、と我慢して荷物を持って帰ってきました。
帰宅後も痛みはひかなかったのですが、刺身を買ったので今日食べないと!とお吸い物と和え物、ごはんもしっかり炊いて夕飯の準備を最後までしました。まさか骨折したと思っていなかったのですが、食事中も腕がどんどん腫れてきて痛みがズキズキ激しくなり、手の甲には内出血が広がっていてとても大変な状態であることが一眼でわかりました。
夫に見せると、すぐに病院に行かないと、と慌てて準備をしてくれました。時間外でしたので大きな病院の救急に行きました。ほとんど待ち時間なしで、医師に会う前にまず腕から肩にかけてのレントゲンとCTスキャンを撮ってもらいました。撮影時も痛みが酷くてなかなか固定できずとても辛かったです。
その後、やっと先生に診察してもらい、レントゲンを元にどのような状態であるかの説明がありました。状態としては、肩の関節部分の骨が見事にささくれだったような状態に折れていて、自然にくっつく可能性もあるが、基本的には手術でスチールプレートを入れて綺麗に骨をくっつける治療が最も有効であると言われました。手術は4日後なので入院は手術の1日前からということになりました。手術が順調にいけば、入院日数は3日間とのことでした。
入院するのは初めてだったので、何から何まで珍しかったです。腕は骨折していましたが、他の部分は元気だったのでずっとベッドに寝て過ごすだけの日々は本当に面白くありませんでした。入院中は4人部屋にいたのですが、それぞれのベッドはしっかりとカーテンで区切られていたので、どのような人が入院しているのかは、全くわかりませんでした。
入院したその日の夜に、一人の女性が私にカーテン越しに声をかけてきてくれました。どういう症状で入院しているのか、年齢は何歳なのか、など自己紹介がありました。すると他の2人の同室の患者さんたちも次々と、自己紹介をはじめてくれました。その時に、心細かった私はとても元気付けられました。
同室の女性たちの温かい心遣いに心から感謝しました。入院室は、本当に無機質で看護師さんも事務的なので、ともすれば気持ちが落ち込んでしまいがちでしたが、この同室の女性たちが、私の不安を吹き飛ばしてくれたことで手術の不安にも打ち勝つことができたと思っています。同室だったのは腹膜炎の40代の女性、足を骨折した30代の幼稚園の先生や心臓カテーテル治療をする70代の主婦の方でした。
70代の主婦の方が一番元気で「カテーテル治療をしにちょっとだけ入院しているだけなの」と言っていました。結婚前は医療メーカーに勤務していたので、カテーテルと言えば「フェイスメディカル」の担当さんがよく病院に来ては、使い方とか新商品の説明などしてくれたことを思い出しました。いつも、病院のラボなどにいたのでいるのが当たり前になっていましたので、すっかり医療スタッフの一員みたいでした。
入院中に怖かったのは、夜になると廊下ですすり泣く声がしたことです。その声は夜中じゅうずっと聞こえてくるのですが、同室の人たちは誰も反応しないし、もしかして私だけが、あの啜り泣く声を聞いているのかもと思うと、背筋がゾッとしてしまいました。ですが、あとからわかったのは、整形外科の入院病棟には認知症の高齢者もかなり入院しているということで、その人たちが夜中も廊下をフラフラ歩いたり、車椅子で徘徊したりするので、その声がダイレクトに入院室に漏れ聞こえてくるのがわかりました。
それにしても夜中の入院病棟というのは、なんとも言えず不気味なものです。まさにホラーの漫画で出てくるようなシチュエーションなので、それもまた恐怖心を誘ってしまいました。ですが日数にしてたったの4日間の入院期間でしたから、本当にあっという間の出来事でした。そんな恐怖体験も手術後の腕の痛みに全てかき消されてしまい、いつの間にか退院の日を迎えていました。ギブスでの生活は不便ですが、やっぱり自宅が一番だと思いました。